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堺、香りの物語〜4章 路地と茶花〜

 利休は当時沢山の茶室を作ったそうですが、現在では、唯一、国宝にも指定されている京都山崎の「待庵」に当時のままの姿を見ることができます。残念ながら滅多に見学することが出来ませんが、インターネットなどで画像は確認することは可能です。利休没後から半世紀後に「数寄屋工法集」という本が書かれましたが、この中には利休作と伝えられる茶室が幾つか描かれています。現在では、こうした資料を基に利休が作ったとされる茶室が復元され、全国各地で見ることが出来ます。
 利休が目指した茶室という空間は、畳二畳分よりも僅かに小さい「一畳台目」と呼ばれるような慎ましい小空間です。しかし、この小さな茶室が設えられる敷地に広がる素朴な庭と、茶室に至るまでに通る路地という屋外の空間が同時に存在していることに大きな意味があるとされています。この屋外の庭や路地を含めて、利休が目指した茶のための空間というべきかと思います。もちろん茶室が一番大事な場所でしょうが、利休は茶を楽しむまでの待ち時間も非常に重視していたようです。洗練された庭園というよりも素朴な山村のような風情を求め、飾らない路地という屋外の空間に、茶席への「導入部」といえる少しの時間を過ごすための演出を目指したといえます。

〜利休と茶花〜
 煌びやかで華やかな空間とは対極的に、慎ましくて、素朴な利休の茶室の特徴は、その空間を飾る生け花にも反映されます。一般的に茶花と呼ばれますが、鮮やかな生け花とは対極的に、地味な花の一輪挿しなど大変素朴なものです。これら茶花は、「花は野にあるやうに」生けるのが良いとされますが、路地から垣間見える季節の花や、茶室に生けられる茶花も含めて、花の生け方にも細心の注意を払うことを利休は指摘していました。このような茶花として、利休が特に好んだとされる「利休七選花」と呼ばれる花がありますが、その中の二つの花について注目したいと思います。

大阪市 ヤマボウシの花
 ひとつは山法師(ヤマボウシ)。最近は街路樹や庭木としても目にするようになりましたが、国内の山地に自生するミズキ科の高木です。6〜7月に花をつけますが、花自体は非常に小さいもので、その周りの包というつぼみを包む白い4枚の葉の方が美しいことで知られています。実はこのヤマボウシよりも近隣種であるアメリカから来たハナミズキの方がもっと良く見かけるかも知れません。 ハナミズキは4月下旬から5月にかけて葉に先駆けて開花するので、大木になると見事ですが、日本の在来種のヤマボウシは葉が大きくなってから花が付くので、少し地味な印象です。
 もうひとつは白侘助(シロワビスケ)。椿よりも一回りくらい小さな花を12月頃から3月に掛けて花が開ききらない七部咲きのような可憐な花を咲かせます。かつてはお茶の木と椿との交雑種ではないかと言われていましたが、最近の研究ではどうも違うらしく、今ひとつ原種不明の交雑種とされています。
 利休が好んだとされる花は、総じて自然の風景や、何気ない日常の中で見かけるような、気を付けないと見落としてしまいそうな可憐な花を一瞬の間だけ咲かせます。庭木としてはあまり目立たない控え目な花を、利休は茶花として位置付け、新しい美の価値をもたらしたと言えるかも知れません。

 奥野晴明堂では、「利休茶」、「利休椿」など、利休の名を冠した製品を幾つか販売しております。
 侘び茶、茶道を確立した利休のイメージに拘りつつ、更に新鮮な香りとして利休を追及し、一歩後ろに下がった謙虚さと一瞬の時間を切り取ったような繊細な躍動感を両立させる利休好みの季節の茶花。こうした路地に静かに咲き、茶室に添えられる一輪の茶花の持つ、ほのかな香りの再現を目指しました。
 是非、奥野晴明堂の香りをお楽しみください。


2012.03.20掲載
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